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トーキを練習したい人は、「代表的なトーキの練習」


 ナナ・ヴァスコンセロスのようなパーカッショニストが自分の感性で自由に演奏する場合は別として、カポエイラの中にはゲームの種類に対応したリズムがあります。これをポルトガル語でトーキ(
toque)と呼んでいます。このあと実践編で詳しく見ますが、すべてのトーキにはベースとなるリズムがあって、それが繰り返し反復されるため、特定のトーキとして認識されるわけです。さらにそのベースのうえに様々なヴァリエーションが組み合わされます。


 例えばアンゴラ(Angola)というトーキが弾かれたときのジョーゴは、どちらかというとゆっくり目のスピードで低い体勢からの動きが多く、相手を出し抜くような駆け引きが強調されます。サン・ベント・グランジ(São Bento Grande)になると、リズムも早めで高い体勢の動きが多くなり、相手との距離も遠くなるためアクロバット的な要素も強くなります。ジョーゴ・ジ・デントロ(Jogo de dentro)は、その名のとおり、相手の中へ入って絡みつくようなタイプのジョーゴになります。またカヴァラリア(Cavalaria)は、特に対応したジョーゴはないかわりに、かつてカポエイラが取り締まりの対象となっていた時代には、警察の騎馬隊などが接近したことを知らせる警告のリズムとして使われていました。


 次に示すのは、1960年代にヘゴが収集した、バイーアの代表的なメストリたちが知っていたトーキです。


 →カポエイラの代表的なトーキを練習してみよう!

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 ご覧のとおりメストリによって知っているトーキの数も種類も大きく異なります。しかし一見多く見える場合でも、実際にはあるトーキのヴァリエーションが独立した別名のトーキとして扱われていることも少なくありません。



 例えばAngola(アンゴラ)とAngolinha(アンゴリーニャ)の違いはごくわずかであり、Angolinhaをレパートリーとして挙げていないメストリでも、実際にはAngolaのヴァリエーションとして無意識に弾いている場合もあるわけです。ただそのメストリにとっては、それもAngolaの一部として捉えられているということですね。あるいは「em gêge」とか「de Compasso」「dobrada」という語が付いているものも、基本的にはベースのヴァリエーションと考えられます。


 さらにトーキに関して複雑なのは、名前が同じなのにリズムが異なっていたり、逆にリズムは同じなのにメストリによって別の名前で呼ばれていたりという問題があることです。このことがトーキを単純に名前だけで比較することを困難にしています。


 ちょっと余談になりますが、上記のリストを作成したヘゴのあとに、そのうちの何人かのメストリをインタビューしたカイの証言を紹介しておきましょう。


 我々が調査した当時、ここに挙げられている何人かのメストリたちは、ヘゴが記録したトーキのいくつかをもはや弾くことができなかった。最終的には、どこでそのようなリストを入手したのかと聞いてくるメストリもいたので、その出典を教えると、確かにヘゴにそれを言ったのは自分であったということを思い出し、あの時はすべてのトーキを弾けたが、今では忘れてしまったと答えた。おそらくその答えは真実だろう。実際にもう何年間も演奏していないトーキなのだから。何人かのメストリは、「他のメストリが挙げているレパートリーは大げさすぎる、彼らはそんなに弾けないはずだ」とコメントした。

 あるメストリは「ジョーゴ・ジ・デントロ」というトーキを弾いてくれたが、数年後、いくつか確認したいことがあったので再び尋ねると、「ジョーゴ・ジ・デントロ」などというトーキはないという答えが返ってきた。


 これは非常に率直で、的を得た証言だと思います。バイーアの年配のメストリを取材したことのある人なら、誰もが「そう、そう、そうなんだよ」と強い実感を持ってうなずくだろうと思います。カポエイラに関するフィールドワークの成否、あるいはそのような調査報告を読むときのポイントは、このような被調査者の特性を踏まえておくことにあるといえます。

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